RADIOISOTOPES
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原著
14C標識体を用いるホルムアルデヒドの作業環境測定
浜田 正名北野 勝弘三ケ田 大吾
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2010 年 59 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

平成21年3月からホルムアルデヒドを取り扱う場所において作業環境測定を行うこととなり,その公定法として高速液体クロマトグラフ法,検知管法のほか指定された簡易測定機器を用いる方法が定められた。病理検査室のようにホルムアルデヒドの発生源としてホルマリンだけを使用する作業場ではホルムアルデヒドを分離定量する必要がないので試料の前処理がやや煩雑な高速液体クロマトグラフ法を用いる利点は大きくない。また,検知管法は大変簡便な方法であるが測定者による読み取り誤差が生じる場合があり,それによって,作業者のばく露防止上の対策にも違いが生ずる。そこで,これらの点を解消する可能性を探るために公定法と同等の分析法として,14Cで標識されたホルムアルデヒドを用いて非標識ホルムアルデヒドの空気中濃度の測定を行うことを試みた。ホルムアルデヒドの発生源であるホルマリン溶液に14C-ホルムアルデヒドを混合し気化させた気体試料を,作業環境測定で広く行われているようにシリカゲルチューブで固体捕集した後,脱着し,シリカゲルに捕集された放射能を計測して求めたホルムアルデヒドの空気中濃度は,計算値及び検知管による測定値とよく一致した。今回,著者らは下限数量以下の14C-ホルムアルデヒドを用いて実験を行った。密封されていない放射性同位元素の許可事業所でない場合は,14Cのみの使用において,その総量が下限数量である10MBq以下であれば放射線障害防止法の規制対象とならない。ホルマリンを使用する作業場において,微量の14C-ホルムアルデヒドを用いて正確に空気中濃度を測定できたことから,ホルムアルデヒドの作業環境測定の際に本方法が有用であることがわかった。

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