RADIOISOTOPES
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原著
T-for-H交換反応を用いたベンズアルデヒド誘導体の速度論的反応解析
山崎 佑樹今泉 洋狩野 直樹
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 59 巻 5 号 p. 311-318

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抄録

トリチウム(3H又はT)が生態系に及ぼす影響と水素を含む種々の化合物の反応性とを明らかにするため,ベンズアルデヒド誘導体とT標識されたポリビニルアルコールとの間における水素同位体交換反応(T-for-H交換反応)を50~90℃の温度範囲で観測した。その結果,反応時間の経過と共にこの誘導体の放射能の増加が認められた。得られた観測値にA″-McKayプロット法を適用することで,各誘導体の官能基の速度定数(k)を求めた。これらのkを相互比較することで,以下の六つが明らかとなった。(1)各物質の反応性には温度依存性がある。(2)ベンズアルデヒド誘導体の温度依存性はo-体>m-体>p-体の順になる傾向にある。(3)各置換基がその物質の反応性に与える影響はクロロ基とフルオロ基の置換基に対し,o-位>m-位>p-位の順になる傾向にある。(4)各置換基がその物質の反応性に与える影響はフルオロ基の方がクロロ基よりも高い。(5)A″-McKayプロット法とHammett則とを使うことで,ベンズアルデヒド誘導体中のホルミル基の反応性を推定することができる。(6)本研究で行った種々の手法は,T汚染の防止や環境に及ぼすTの影響評価を行うための手法として期待できる。

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