2011 年 60 巻 4 号 p. 163-171
本論文では,電子スピン共鳴(ESR)法を用いて,照射により生パパイヤに誘起されたラジカルの直接的検出を報告する。本法は,生鮮果実のラジカル測定で凍結乾燥処理を要しないため,これまでより迅速に検出できる。
フィリピン産の生パパイヤをγ線照射し,その果肉と果皮を液体窒素温度(77K)でESR測定した。測定条件を最適化することで,生のパパイヤからg=2.000を中心とする1本線のメインピークと一対のサイドピークを検出することができた。更に,果肉の凍結乾燥検体のサイドピークでは,照射2週間後でも照射・非照射の識別が可能であった。
したがって,照射された生鮮果実を対象としたESR法では,最初に,果肉を用いて液体窒素温度で測定して簡易判別を行い,次の段階では,凍結乾燥検体を用いて常温で判別する検知スキームが有効であると考えられる。