2011 年 60 巻 6 号 p. 231-240
硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比(δ15N,δ18O)はその高い起源推定能から海洋,湖沼,河川,地下水での物質循環の研究に用いられてきた。1990年代半ばに開発された脱窒菌法により,硝酸イオンのδ15N,δ18Oを微量で同時に測定できるようになった。脱窒菌法で多量のサンプルを短時間に精度よく測定するには前処理ライン(N2Oガスを質量分析計に導入するための前処理)が必要不可欠である。しかしながら,こうした前処理ラインの分析機器は高額(数千万円程度)である。著者らは多くの研究室に設置されている通常の固体粉末試料の同位体測定ライン(質量分析計と元素分析計がConflo IIIで連結された測定システム)を活用し,測定精度や処理速度を落とすことなく,安価に自動前処理できるラインを開発することに成功したのでここに報告する。