RADIOISOTOPES
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原著
神奈川県における茶葉中放射性セシウム濃度低減への摘採・せん枝の効果
白木 与志也北 宜裕武田 甲
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2012 年 61 巻 12 号 p. 587-594

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抄録

神奈川県内の茶において,一番茶に降下した放射性セシウム濃度に地域差があらわれる要因を解明するため,一番茶放射性セシウム濃度と一番茶採取地点の福島第一原発からの距離,標高,放射性セシウム降下時の降水量,降雨回数の関係を解析した。その結果,一番茶放射性セシウム濃度とこれらの間には,明確な関係が認められなかった。
二番茶以降の放射性セシウム濃度を支配する要因の解析を重回帰分析により行った。その結果,二番茶以降の137Cs減少濃度を目的変数とすると,説明変数には一番茶137Cs濃度及び摘採・整枝回数が取り込まれ,重相関係数は0.915(p<0.01),決定係数は0.838であった。目的変数を二番茶以降の137Cs濃度低減率とし,説明変数を摘採・せん枝回数のみとした場合は,重相関係数0.755(p<0.01),決定係数は0.570であった。
以上のことから,本研究では,神奈川県茶産地の一番茶に降下した放射性セシウム濃度の地域差は,福島第一原発からの距離と降水量等のみでは説明できないことが明らかとなった。また,二番茶以降の137Cs濃度低減率に対する摘採・せん枝回数の寄与率は,57%であることが判明した。

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