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メスバウアー散乱法による固体表面分析の基礎と応用
メスバウアー散乱法による固体表面分析の基礎と応用
野村 貴美
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2014 年 63 巻 8 号 p. 405-427

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抄録

メスバウアー散乱法のうち,転換電子を検出する方法(CEMS)では約100nmの薄い皮膜の状態が,X線を検出する方法(XMS)では10μmの厚さの表層の状態が分かる。転換電子及び共鳴X線を同時に検出する二重検出器によって鉄材料の表面の層別状態分析が容易になる。放出される転換電子のエネルギーを弁別すること,又はγ線の入射角を低入射角に変えることによって数十nm以下のより薄い皮膜の層別状態分析が可能になる。これらは深さ選択性CEMS(Depth selective CEMS)又は視斜角CEMS(Glancing angle CEMS)と呼ばれる。CEMS解析の例として,ステンレス鋼の蒸着膜はマルテンサイト変態していること,その磁気モーメントの方向はDC及びRFスパッタ方法により異なること,また表面研磨によってもオーステナイト相はマルテンサイト相に誘起されることが示される。イオン注入鉄のナノ粒子解析のための磁場印加CEMS,多層膜の界面磁性や薄膜の表面磁性の解析のための放射光ビームによる核共鳴のブラッグ反射スペクトル及び全反射スペクトルについても紹介する。

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