2026 年 75 巻 1 号 p. 61-69
放射線の細胞への影響としてゲノムDNAの損傷が重要であるが,同時に細胞小器官であるミトコンドリア,リソソーム,ゴルジ体,中心体なども影響を受ける。とりわけ中心体は放射線照射により過剰な数が複製され,染色体不安定性に至ることからその影響は大きい。中心体は多くのシグナルタンパク質が局在しており,シグナルのハブとして機能していると考えられているが,興味深いことにゲノムDNA損傷を修復する因子が中心体に局在し,その複製を制御していることがわかってきた。さらに最近の知見では中心体タンパク質が正確なDNA修復の進行に重要であるという知見が増えてきており,中心体とゲノムDNAの相互関係がゲノム安定性にいかに関わるのかについて注目されている。本稿では放射線照射後の細胞内における中心体の挙動を中心にその役割について概説する。