1967 年 16 巻 10 号 p. 537-542
ヒ素の分離法としてグトツァイト変法を放射化分析法に併用し, 微量ヒ素の定量分析を行なった。
生体試料などのヒ素の公定分析法として用いられているグトツァイト変法は比較的簡便に定量できるが, 3μg以下の微量ヒ素の定量は非常に困難であり, またときには誤差がかなり大きい。そこで筆者らは放射化分析によるヒ素の定量をこころみた。まず熱中性子束, 4×1012にn/cm2/secで1時間照射した試料を湿式灰化し, グトツァイト変法に従って発生するヒ化水素を臭化第二水銀紙に捕集し, その放射能を測定して, 微量のヒ素を定量した。
本法で定量されうる分析感度, および回収率を検討した結果, 分析感度は10-3μgのオーダーであり, 回収率は約80%で, そのバラッキは10%以内であった。さらに本法により人頭毛髪中の微量ヒ素の定量を行なった。