1968 年 17 巻 1 号 p. 1-9
35S-グルタチオンを成熟雄マウスおよび妊娠マウスに静脈注射し, その生体内分布を全身オートラジオグラフィによって検索した。雄マウスにおける35S-グルタチオンあるいはその代謝物の放射能活性は, 静注後速やかに肝臓, 腎臓の皮質, 皮ふ, 膵臓, 唾液腺および胃腸粘膜に認められた。膵臓への取込みは静注30分後から6時間後まで最高濃度を示したが24時間後には唾液腺より減少した。皮ふの活性は経時的に真皮の下部より上部へ移行し, その取込み部位は毛根にそって認められた。一方, 妊娠マウスにおける放射能活性の推移をみると, 母体では雄マウスの場合に比して血中濃度がやや高く皮ふへの取込みは少なかった。母体の全身的な放射能活性のピークは静注3時間後であるが, 胎児の活性は24時間後まで経時的に増加し, そのおもな臓器は肝臓, 脳, 眼, 骨格などであり, とくに脳の活性は親のそれより著しく高かった。