温泉水のトリチウム濃度の測定

抄録

本邦のいくつかの温泉についてトリチウム濃度を測定し, 河川水などとの比較を行なった。試料水を蒸留後, 2段の電解操作によりトリチウムを濃縮し, 液体シソチレーションカウンタでその放射能を測定した。河川水のトリチウム濃度が70～100TRであったのに対し, 大部分の温泉水はその1/10以下であり, トリチウムの検出されないものもみられた。これらの温泉はかなり古い地下水系統のものと考えられる。一方那須 (栃木県) の大部分の温泉はトリチウム濃度が70TR前後で, 河川水と大差がなく, 新しい循環水系統のものであることが示された。トリチウム濃度の測定は温泉の起源や湧出機構の解明に有用な情報を与えるものと考えられる。