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90Srの河川への流亡に関する研究
鎌田 博湯川 雅枝佐伯 誠道
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1973 年 22 巻 6 号 p. 279-285

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抄録

江戸川水系, 阿賀野川水系および淀川水系において, 1962~9年にわたり放射性降下物の90Srの河川への流亡の諸過程について水文気象学的, 放射生態学的な見地からハイドログラフの解析を行なった。すなわち, 90Sr年間流亡量Q (Sr) (Ci) , 流域内における90Sr年間降下量R (Ci) , 前年末の90Sr地表 (深さ; 0~5cm) 蓄積量d (Ci) , 90Sr土壌総蓄積量D (Ci) , 年間降水量γ (m) とその流出率Crから次式が得られる。
Q (sr) =Cl・R・Cr+C2・ (R+d) ・γ・Cr+C3・〔D- (R+d) 〕・γ・Cr
水面流出による90Sr流亡に関する係数C1は, 江戸川では無視しうるほど少なく, 阿賀野川では0.00626, 淀川では0.0748, 表面流出+中間流出の一部による90Sr流亡に関る係数C2は0.0110, 0.0187, 0.0171, 中間流出の残部十地下水流出による90Sr流亡に関する係数C3は0.00552, 0.00585, 0.0104がそれぞれの水系につき求められた。各流亡過程における経時的な相関をみるため, これらの90Sr流亡過程をハイドログラフ的に解析すると, Rのピーク時と比較して, 水面流出ではその頂上部とよく一致しており, 表面流出+中間流出の一部では1~2年遅れであり, 中間流出の残部十地下水流出では5~6年遅れであった。またQ (sr) は, 江戸川では0.7~2Ci, 阿賀野川では5~14Ci, 淀川では3~10Ciであり, 流域土壌からの90Sr流亡率はそれぞれ0.2~0.4%, 1~2%, 1~2%であった。

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