1980 年 29 巻 12 号 p. 585-589
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) で死亡した患者6例の頸髄前角部位における微量元素の含有量を, α線励起螢光X線分析法を用いて測定した。バンデグラーフ加速器で加速された1.6MeVのα線ビームで励起した各試料のX線スペクトルをSi (Li) 検出器で計測し, 各元素のピーク面積から, ALS試料中の微量元素の含有量を対照試料に対して相対的に定量した。その結果, ALS頸髄前角部位には, Al, Si, P, Ca, Ti, V, MnおよびFeの各元素が, 対照試料のそれらに比べて相対的に高濃度に含まれていることが明らかになった。これら元素の頸髄への沈着機構を今までの研究結果をもとに考察した。