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イネ矮性突然変異体のエチレン生産とその生長促進効果
吉羽 洋周関口 文彦山口 彦之
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1993 年 42 巻 6 号 p. 335-340

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抄録

フジミノリのガンマ線照射で得られた半矮性突然変異品種のレイメイと矮性突然変異系統のふ系71号は, 成熟期にフジミノリと比較するとそれぞれ約15cmと45cmの節間伸張が抑制される。しかし, 発芽初期生長を比較すると逆に, 矮性であるレイメイ, ふ系71号の方が正常型のフジミノリよりも旺盛な生長を示すことが認められた。そこでこれらの矮性イネが何に起因して生長促進を示すのか調べた結果, 高いエチレン生産能を有することが判明した。
エチレン生産量は, 穎を除去した各種子10粒を25m1サンプル瓶内で無菌的に発芽させ, その気相を採取し, ガスクロマトグラフィにより同定し定量した。発芽3日目のエチレン量は, フジミノリで70.5nmol, レイメイで約2倍の174.7nmol, ふ系71号では7.1倍の498.4nmolであった。
これらのエチレン生産は, エチレンの生成阻害剤であるアミノエトキシビニルグリシン (AVG) 処理で抑制され, とくに矮性イネにおいて効果的であった。
さらに, エチレンの先駆体であるメチオニン (Met) , S-アデノシルメチオニン (SAM) および1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸 (ACC) 処理に対する生長反応を調べた結果, ACC処理にのみ矮性型と正常型で異なった反応を示した。この反応は, フジミノリで最も高く (対照の約1.5倍) , レイメイではわずかにみられ (約1.2倍) , ふ系71号では生長を促進するような反応はみられなかった。以上の結果から, これらの矮性イネがエチレンの生合成系に関する突然変異体であることが示唆された。

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