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低濃度レベルのラドン娘核種測定法の開発
黒澤 龍平飯本 武志床次 眞司
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1995 年 44 巻 4 号 p. 225-235

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抄録

野外環境における低レベルラドン娘核種個別濃度用の測定法を開発した。本論文では, 特に算出された濃度の信頼性について述べた。
ラドン娘核種の分布を明らかにするために, 低レベルのラドン娘核種個別濃度を正確に評価することが求あられている。しかしながら普及しているZnS (Ag) シンチレーション測定装置は, 通常フィルタの大きさの制限から大きな捕集流量は期待できず, 野外濃度の測定には検出感度が十分ではなかった。このような測定装置の218Poに対する検出限界は, せいぜい約10Bq・m-3程度である。
より高い検出感度を実現するためには, より大きな流量での捕集, より高い検出効率が要求される。本研究では以下の項目を, 大流量, 高感度を得るための, 採取フィルタに求あられる重要なファクターと考えた。それは, (a) 大きな採取領域, (b) 低圧力損失, (c) ラドン娘核種に対する高捕集効率である。これらの条件から, ハイボリュームエアサンプラ (HVAS, スタープレックス社製) と組み合わせたフロロポアAF07P (85mmφ) フィルタが4001・min-3の高流量が得られ, 最も高い検出感度を達成できることがわかった。
またこの大面積のフィルタの表面に捕集された娘核種のα線を有効に検出するために, 大面積の (125mmφ) ZnSシンチレータを適用した。α線に対するこの検出器の計数効率は, 218Poについては24.5%, 214Poについては34.5%と推定された。これらの効率は実験とシミュレーションの両方で評価し, それぞれ同値を示した。測定にかかる時間は以下のように決定した。採取時間5分, 待ち時間1分, 計測時間各5分, 全50分である。濃度の計算には最小自乗法を導入した。この方法による検出下限濃度は, 218Poで1.5Bq・m-3, 214Pb, 214Poで0.4Bq・m-3であった。

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© 社団法人 日本アイソトープ協会
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