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二酸化炭素吸収剤を用いた環境試料中14C測定法の検討
府馬 正一井上 義和
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1996 年 45 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

二酸化炭素吸収剤と液体シンチレーションカウンタを用いた簡便で比較的高精度の方法により, 環境試料中の14Cを定量することを試みた。二酸化炭素吸収剤としてはカーボソープ (パッカード社) を用い, シンチレータとしてはパーマフローEプラス (パッカード社) を用いた。
計測試料100ml中には最大2.78gの炭素を導入可能である。二酸化炭素吸収剤からの二酸化炭素の再放出は吸収後5か月間認められなかった。液体シンチレーション計測を妨害し, これまでの二酸化炭素吸収法で問題となっていた計測試料の着色は, 本法ではまったく認められなかった。計数率は経時的に一定であったが, 外部標準チャンネル比 (ESCR) は試料調製後最初の2週間は減少し, その後一定となった。そこで, 14Cの測定は, 試料調製後少なくとも2週間経過してから行った。
二酸化炭素の吸収は, アミン化合物の一種である二酸化炭素吸収剤に起因するクエンチングを減少させた。バックグラウンド計数率と計数効率は二酸化炭素吸収飽和度とともに増加したが, ESCRによって推定可能であった。100ml石英バイアル使用時に二酸化炭素を飽和まで吸収させ, 計測を2000分間行った場合の検出下限値は約0.2dpm/gCであったが, これは現在の14Cレベルよりもはるかに低い。20mlバイアルを用いても, 100mlバイアルの場合と同様, 環境試料中の14Cを精度よく定量できた。
本法により, 1993年千葉県産精米中の14Cを定量したところ, 15.1±0.2dpm/gCとなった。この値は, 1993年に日本で採取された環境試料についての他の報告値と近かった。

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