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土壌からイネヘの微量元素等の移行に及ぼす酸性灌漑水のpHの影響
前野 智和谷崎 良之
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1996 年 45 巻 3 号 p. 166-175

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抄録

土壌からイネへの微量元素等の移行に及ぼす灌漑水のpHの影響を調査するために, イネを14の水耕器にてpHの異なる6種類の酸性灌漑水 (pH: 6.5, 6.0, 4.5, 3.5, 3.0, 2.5) およびイオン交換水 (pH: 7.5) を用いて灌漑した。酸性灌漑水は1Nの硫酸と硝酸の同量混合液をイオン交換水で希釈して調製した。収穫されたモミを, 白米, ヌカおよびモミガラの三つの部位に分離し, おのおの粉末試料とした。
これらの試料は中性子放射化分析を行い, 25元素の含量を求めた。その結果, 白米中のCu, Zn, Fe, Cr, Mg, Rb, Mo, Ni, Csの含量は酸性灌漑水のpHの低下とともに増加し, 対象的にBr, Seは含量が減少した。Na, Al, Sc, Mn, Cl, Ca, V, Coは, 酸性灌漑水のpHによる白米中含量の変化がほとんど認あられなかった。モミやヌカ中の元素含量への酸性灌漑水のpHの影響は, 白米のように明確には現れなかった。
一方, 各元素の土壌中濃度に対するモミへの濃縮係数を算出したところ, Cl, Mo, Zn, Se, Cu等の元素は白米に顕著に濃縮されていることがわかった。また, Mg, Cr等の元素はヌカへの濃縮が顕著であった。

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