2003 年 52 巻 4 号 p. 173-179
電子スピン共鳴法 (ESR) を用いて, 加熱時のγ線照射胡椒中のラジカル種の変動に関する研究を行った。ESR信号は四つの信号を示した。g=2.0を中心とする6本線と, g=2.0に位置する鋭い信号とg=4.0の広幅の信号, さらにg=2.0近傍の一対のサイドピークである。第一の信号は超微細結合定数が約7.4mTであることから, Mn2+と同定された。2番目の信号はγ線照射によって発現したと考えられる有機遊離基ラジカルである。3種の信号はFe3+によると推察された。これら3番目の信号は照射処理前の胡椒試料中にも発現した。4番目の信号は照射胡椒にのみ観測され, 有機遊離基ラジカルの信号に対称な位置に出現する信号である。この信号の強度は加熱時間が増加するに従い減少し, 加熱10分後には照射前の信号レベルになった。一方, g=2の有機遊離基ラジカルの信号強度は加熱時間に従って一時的に増加し一定値に収束した。