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核医学診断を受けたコンパニオンアニマルに関わるヒトの外部被曝線量評価
伊藤 伸彦花輪 明日美鈴木 花杏鍋島 紀子永井 裕司夏堀 雅宏石川 達也畠山 智二ツ川 章二寺崎 一典坂本 幸夫
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2004 年 53 巻 1 号 p. 13-24

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抄録

この研究は, 我が国における獣医核医学を行うための安全ガイドラインを作ることを目的に行われた。よく用いられる放射性核種 (18Fと99mTc) が, 獣医師, 動物所有者, 及び公衆の外部放射線被曝を評価するために採用された。動物にみたてたファントム中の放射線源からの人間の外部放射線被曝は, コンピュータシミュレーションの計算結果と実際に測定された線量を比較することによって考察された。コンピュータシミュレーションは, マイクロソフトVBAのマクロプログラムを用いることによって実行された。このシミュレーション計算の過程で, γ線が動物の体の中の放射性物質から放出されている状態で, 放射線の吸収とビルドアップが考慮された。シミュレーション結果は, 実測値と比較して過大評価される傾向があったが, 両方がよく一致した。したがって, 人間の体外被曝に関する見積りのために本システムを適用することが可能と思われた。放射性物質が内臓 (心臓, 肝臓, 腎臓, 及び膀胱) にのみ存在する条件で計算が行われたとき, 線量率は動物体の近くで不均等分布するのが見出された。獣医師, 動物所有者, 及び公衆への外部放射線被曝見積りは実際の作業条件, 線源からの距離, 及び被曝の時間を考慮して実行された。計算では, 動物所有者と公衆の被曝線量は, 放射性薬剤投与の24時間後の退院では線量限度 (動物所有者, 及び一般のための1mSv/年と5mSv/年: ICRP 1990) を超えなかった。この研究で用いられた計算条件は実際より線量が過大になるよう設定された。したがって, 日本で獣医核医学を始めることによって, これらの被曝がどんな有意の問題も引き起こさないと考えられる。更に, 実際には注入された放射性薬剤が体外に排出されるので, 動物所有者と一般の被曝は実際には見積りよりはるかに低くなると推測される。日本の獣医核医学のための安全ガイドラインは, 本研究で用いた手法の更なる応用によって確立されると思われる。

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© 社団法人 日本アイソトープ協会
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