RADIOISOTOPES
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日本における研究用加速器施設の現状 (2005年) 調査報告と量子ビーム利用の広がり
理工学部会量子ビーム専門委員会
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2005 年 54 巻 12 号 p. 609-647

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抄録

理工学部会量子ビーム専門委員会では, 量子ビーム利用の現状把握と今後の利用展開に関して検討してきた。初年度には大型加速器利用の現状や医療分野への利用等についての専門家の講演を含め, 最先端の量子ビームの開発・利用の現状について調査し, 今後の加速器利用や研究のあり方について検討した。2年度には, 加速器を利用したいがアプローチの仕方がわからないという多くの加速器利用希望者のために, 加速器施設の現状について調査し, 共同利用可能な加速器について調査を行ってきた。この経緯については, 既にRADIOISOTOPES誌に中間報告を行った。中間報告では, 加速器の利用が建設当初の分野からかなり様変わりし, また大きく広がってきていることが浮き彫りにされた。注目すべき点は, 何らかの形態で, 加速器施設を施設外の利用者にも開放している施設の比率が, 当初, 当委員会が予想していた比率に比べて極めて高く, 8割以上にものぼっていたことである。中間報告後に行った今回の調査では, 加速器を用いた量子ビームの開発・利用及び加速器施設の施設外利用の2点について, 中間報告より掘り下げて調査した。アンケート調査は加速器施設を管理・運営している研究者に対して行った。調査した研究者は複数の加速器施設で働いた経験を持つ人が多く, かつ他の加速器施設を利用している場合が多いという事情を反映してか, 加速器利用研究全体にも知識が豊富で, 加速器施設の今後の利用動向に関心が深い回答が多く寄せられると同時に, 加速器施設の将来像を強く意識したと思われる回答も多く見られた。今回の調査で, 多くの新しい量子ビームの開発と量子ビームの利用拡大とを非常に意欲的に行っている加速器施設が急激に増加していることがわかった。加えて, 初年度の講演会, 前回及び今回のアンケート調査に基づいた当委員会での検討結果及び量子ビームの最新の動向から, 多くの加速器施設でナノテクノロジー・材料やバイオテクノロジー等の分野に単に量子ビームを利用するという研究だけでなく, 量子ビームと利用分野との双方向的な異分野連携・融合型の研究が出始め, 異分野融合から新しいタイプの研究が生まれ始めてきていることもわかった。加速器利用が, 基礎科学だけでなく, 広く社会にも貢献する科学技術へという流れ及び異分野間連携・融合による利用の活性化と拡大という大きな流れが見られた。これは, 最近の量子ビーム利用全体の「量子ビームの利用拡大と量子ビーム利用の科学から科学・技術へ」という流れとも良く一致している。

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