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放射性水銀 (203Hg) のラット体内分布と排泄について
西連寺 永康板井 千年浦田 行道鈴木 智哲山野 博可佐々木 恵美子
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1960 年 9 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

1) 203Hg (NO3) 2を生理食塩水にうすめそれぞれ4.0μcをラットの静脈に注射し, 経日的にその体内の放射能分布をガンマ線計測によって比較観察した。また, 別に毎日の尿および屎中の水銀量をしらべ排泄の状態を明らかにしようとした。
2) 体内にはいった水銀は, 各臓器内に急速に分散する。臓器内への濃縮度は腎臓が極めて高く, また, 実験期間の初期においては, 脾臓, 肺, 筋肉, 肝臓などが高い割合であり, その後期においては, 腸, 脾臓, 肝臓, 肺, 皮膚などに比較的多量にみとめられる。
3) 臓器あたりの放射能量は, 投与後6時間ではその約50%が筋肉内にみられ, 次いで腎臓, 血液, 皮膚, 肝臓, 骨, 腸などの順であった。そののち筋肉内の放射能量は急速に減少するが, 腎臓では次第に増加し15日目で投与量の50%に達する。脳中の放射能はその絶対量は極めて少ないが, 排泄は甚だおそい。
4) そのほかの各臓器内からの放射能の減少は, 最初の1週間は急激であるがそののちは緩やかになる。また, 減少の傾向はほぼ同一の型をしている。
5) 水銀の排泄は屎および尿をとおしてなされ, 排泄水銀総量は2カ月後に投与量の約70% (屎約40%, 尿約30%) であった。排泄は最初1週間以内が急激であり投与量の約35%が出される。この時期においては, 屎中への排泄量が尿中へのものよりも多いが, 投与後10日付近でこの割合は逆転する。そののちの緩徐な部分における減少の傾向は, 屎中のものが肝臓内のものと, また尿中のものが腎臓内のもののそれとよく一致する。
6) 体内の水銀残存量を算出し, それから水銀の生物学的半減期および203Hgの有効半減期を求めて, それぞれ40ないし50日, および21.5ないし24.2日を得た。
終りに, 本研究の実施にあたり終始ご指導とこ激励をたまわった日本大学歯学部長鈴木勝教授に深く感謝申し上げます。また, 実験に関して, 有益なご助言をいただいた東京大学理学部斉藤信房教授ならびに東京教育大学理学部池田長生助教授に厚くお礼申し上げす。

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