1960 年 9 巻 3 号 p. 247-258
(1) ポリセロで真空包装したγ線照射豚内および鶏肉の20°貯蔵過程における肉成分の変化を明らかにし, 蛋白波の変化を比較検討する上の参考資料を提供した。
(2) 照射豚肉および鶏肉における臭, 色, 貯蔵性並びに蛋白量の変化は, 牛肉におけるそれらの傾向にほぼ類似していたが, 照射鶏肉における貯蔵性は乏しかった。
(3) 照射豚肉および鶏肉からは, ブロムフェノールブルー法による有機酸類の呈色は, 乳酸の1スポットのみに過ぎず, それ以外には認められなかった。照射豚肉および鶏肉からは, Jaff陬反応による第3スポットは認められなかった。これらの点は牛肉と著しく異なっている。
またそれらの肉から, 7種類の遊離アミノ酸類を検出決定することができた。
(4) 照射豚肉および鶏肉中の乳酸, 遊離クレアチンおよびクレアチニン量は20°貯蔵中著しい変化を示さなかった。
(5) 照射豚肉および鶏肉中の遊離アミノ酸量は, いずれもある程度の貯蔵日数までは貯蔵の進むにつれて増加していった。この点牛肉の場合と類似している。
(6) 20°貯蔵中の照射豚肉および鶏肉から検出された乳酸および遊離アミノ酸類はいずれも希薄であったので, 肉蛋白波に直接干渉してその波形を変化させるものとは考えられなかった。
終りに臨み種々ご助言を賜わった東京大学神立誠教授, 津郷友吉教授並びに藤巻正生助教授の諸先生に厚く謝意を表する。本実験は当研究室員小野文夫, 染谷淳一郎, 城田澄子, 平山昇, 岩崎光雄, 大島明, 小野寺正敬, 成沢敏雄並びに藤田, 健諸君の助力により, またγ線照射は理化学研究所応用化学研究室滝沢正男先生のご協力により達成し得たものであり, 試料は中央食品株式会社の提供によったものである。なお研究費の一部はロックフェラー財団の援助によったものである。あわせて感謝の意を表する。