抄録
本稿は二〇世紀初頭における国際秩序を、近代日本の知識人がいかに認識していたかについて大日本平和協会の「平和」認識から分析するものである。大日本平和協会は、一九〇六年に創設された日本で最初の平和運動・国際親善団体と論じられている。協会の「平和」認識は、「戦争の無い状態」という狭義の概念から、対外進出や排日という実際上の問題に対応するため「公平」「平等」という普遍的概念を含む広義の「平和」認識へと展開した。さらに第一次大戦後、勢力均衡による秩序安定が困難になると、国内外のデモクラシーや「民本主義」の風潮と共鳴し自由・平等という普遍的要素を媒介に秩序形成が図られるようになった。「平和」認識もこの思想に基づき国際社会の安定と排日問題の改善という意味が付加されようになっていった。この思想的展開過程から「非戦」でも「反 戦」でもない協会の「平和」認識が持つ意義を見出すものである。