日本信頼性学会誌 信頼性
Online ISSN : 2424-2543
Print ISSN : 0919-2697
ISSN-L : 0919-2697
線路上空を利用した駅舎等の耐震設計(構造物の信頼性)
武居 泰
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 32 巻 5 号 p. 286-291

詳細
抄録

駅舎や駅ビルに利用される建築物の中には,線路上空を利用したものが多くある.そのような建築物(線路上空建築物)は,施工時の安全性や経済性の面から一般建築物では設置されている地中梁が省略された特殊な構造形式になることが多く,また,建築物の最下階(線路階)を列車が走行し多数の旅客が利用することや地震後の迅速な駅機能の復旧を考慮して,耐震性能をより高めた設計が要求される.そこで,地震に対する構造安全性を確保する目的から耐震設計に関する指針「線路上空建築物(低層)構造設計標準」を制定し,現在までに数多く適用されてきた.設計法の特徴として,各地震動レベルに対して目標性能を定め,特に線路階については,列車が運行する空間を覆うシェルターとしての重要性を考慮し,部材に生じる損傷の順序や大きさを制限して耐震性能を高めるようにしている.また,地中梁が無い構造形式に対応するため上部構造と基礎杭を一体とした設計用解析モデルを適用したり,鉄道システムの一部を担うという観点から土木構造物とも耐震性能の整合が取れるように特別な検討を付加して,線路上空建築物の構造安全性を確保している.

著者関連情報
© 2010 日本信頼性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top