2012 年 34 巻 2 号 p. 131-138
日本の地上波テレビジョン放送は,2011年7月24日にデジタル放送に完全移行した.地上デジタル放送では,マルチパスに強いOFDMという伝送方式が用いられ,中継方式にはSFNが採用されている.SFNは複数の隣接する中継局に同じ周波数を割り当てるため,人為的にマルチパス環境が作られてしまう.放送サービスを提供する上で,そのサービスエリアの正確な把握が重要であるが,地上デジタル放送の品質評価に用いられている既存の評価手法では,マルチパス環境の評価時に誤差が大きかった.そこで,新たに「環境劣化量」と「マージン」という尺度を導入した評価法を提案し,屋外実験を行い提案手法の精度を検証した.その結果,電力マージンの誤差は±1dB以下となり,提案手法の有効性を確認することができた.また,放送波の位柑変動の精密測定を行い,風力発電用風車の影響や,送信アンテナの揺れを観測することができた.