本研究は,保育士の役割の二重性に伴う保育相談支援の葛藤の実態と構造について,探索的に明らかにすることを目的としている。保育士を対象とした半構造化インタビューを行い,SCATを用いて分析を行った。その結果,保育士の葛藤は,①親と子の相反するニーズ間での板挟み,②子どもの表明するニーズの転換の2点にあり,これらの葛藤には「子どもの最善の利益が考慮されていない」という思いが通底していることが明らかとなった。また,この葛藤は「倫理的ジレンマ」として捉えられ,その背景要因として,子どもの最善の利益の不確実性と保育士の子どもとの心理的な近接性があると考えられた。