保育学研究
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原著<論文>
明治20年代における幼小の接続問題
―幼稚園における「読ミ方」「書キ方」の存廃問題に着目して―
鈴木 貴史
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2020 年 58 巻 2-3 号 p. 7-17

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抄録

本研究は,幼小の接続問題について,おもに言語領域における文字教育の接続に着目して検討することを目的としている。その方法として,はじめにフレーベルの文字教育論について確認し,それが東京女子師範学校附属幼稚園(以下,「附属幼稚園」)をはじめとしてわが国に受容されてきたのかを辿った。その方法として,附属幼稚園における「読ミ方」,「書キ方」の導入から1891(明治24)年における削除に至る時期について,当時の主事であった小西信八や中村五六を中核に据えて保育理論書や雑誌記事を参照した。わが国では明治10年代に恩物による文字教育から「読ミ方」「書キ方」における系統的な文字教育へ移行していた。その後,明治20年代に「読ミ方」,「書キ方」が保育科目から削除されたことにより,幼稚園における文字教育と小学校のそれとは明確に分離されることになった。明治20年代の幼小の接続問題の一つには,幼稚園での「読ミ方」「書キ方」において幼児の興味関心が軽視されたことにより,小学校以上の系統的な文字教育へ円滑に移行することができなかった点があった。

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© 2020 一般社団法人 日本保育学会
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