2021 年 47 巻 1 号 p. 29-41
本研究の目的は,強度の全身伸展筋緊張を呈する脳性麻痺児に対して動作法を用いて関わった心理リハビリテイションキャンプの事例経過を報告し,児の動作コントロールの獲得に伴う身体図式の明確化と自己の発達について考察することであった。トレーニーは心理リハビリテイションキャンプに初めて参加した特別支援学校小学部1年の7歳女児Aであった。Aは,強度の全身伸展筋緊張のために,一度身体が緊張すると自己弛緩することが難しかった。トレーナーらは,不本意にAの股関節が緊張した際に,Aが緊張に気づき,自己弛緩感を獲得することを目指した。また,股関節を深く屈げた状態での「タテ系」では,Aが自分自身の身体の各部位の適切な力の入れ方を学び,コントロールすることを目指した。リラクセーションと「タテ系」に取り組むなかで,Aは自らの身体図式を覚知し,環境に能動的に働きかける主体としての自己の確立が促されたと思われた。