2025 年 26 巻 p. 1-11
抄録:後天性の脳損傷による高次脳機能障害者の発症から地域生活の再構成を円滑に進めるために,代表的な高次脳機能障害のリハビリテーションを紹介し,リハビリテーション連携の現状の課題とその解決について論じた.高次脳機能障害は記憶方法,ミスを減らす方法などの内的代償戦略と道具や環境を用いた外的代償戦略を合わせて用い,自分の能力の自己認識であるメタ認知の使用が推奨されていた.また,単純な記憶や注意機能,遂行機能は良好な回復を見せるが,より複雑な注意機能は長期にわたって障害が残り,一部の対象者は機能の低下を呈することが報告されていた.その原因には社会参加状況やQOLが関係していることが示唆された.高次脳機能障害者の地域生活の再構成を進めるためには,障害に関する知識,進化するエビデンスに基づくリハビリテーションの適用,そして複数の社会福祉制度の理解を基盤としたリハビリテーション連携が必要と考えられる.