宗教と社会
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マレーシアにおける徳教の教団的展開
黄 蘊
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2007 年 13 巻 p. 75-103

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抄録

本稿は、マレーシアの華人教団徳教の展開過程に注目し、徳教の教団的拡大とその存在の様相について考察しようとするものである。徳教は、20世紀前半中国の潮州地方に誕生した扶鸞結社であり、戦後潮州系商人によって、マレーシアなど東南アジアの華人社会に伝播され、以来教団的展開を続けてきた。今日、徳教は大きな組織力を発展させ、マレーシアにおいて最も知られる華人新興宗教の一つに数えられている。一方、その教団活動は、扶鸞や世俗的サービスの提供を中心にしており、完全なる宗教制度が確立されていない。そのため、徳教団体は、厳格な意味でいう宗教教団と一般の華人アソシエーションの中間に位置するようなものと位置付けられる。徳教のこうした展開は、その主な担い手となる商人階層の性格や移民社会の社会状況と大きく係わっている。本稿は、徳教展開の社会的文脈とその担い手たちの思考、行動に注目し、徳教の教団的展開の様相を明らかにすることを試みる。

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