2011 年 17 巻 p. 31-46
現代日本社会では、宗教団体に対する否定的言説がある。このような社会で宗教信者として生きるとはどのようなことであろうか。本論文ではこの問いを「宗教」という言葉の語りを分析することにより検討することを目的とした。日本人プロテスタント14名をインフォーマントとした半構造化面接を行い、その語りをポジショニングの視点から質的に分析したところ、「宗教」という言葉は3つのポジションおよびストーリーラインから語られることが見出された。「宗教」という言葉の含意は、3つのポジション間で異なっており、それらのポジションは語りの中でしばしばシフトしていた。考察では、日本社会でキリスト教徒として生きるということが、日本社会とキリスト教の間をシフトする動的な営為であることが論じられた。本知見は、日本社会における宗教信者の一側面を照射する上で「宗教」という言葉に着目することが有用であることを示すものである。