宗教と社会
Online ISSN : 2424-1601
Print ISSN : 1342-4726
ISSN-L : 1342-4726
宗教の社会貢献についての一考察 : サウジアラビアの勧善懲悪委員会を事例とした社会における両価性の検討
高尾 賢一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 19 巻 p. 65-78

詳細
抄録

本稿は、サウジアラビアでイスラームに基づいた風紀取り締まりを行う勧善懲悪委員会の両価性を検討し、その社会における機能を考察することで宗教の社会貢献を巡る研究を展望するものである。委員会はサウジアラビアの建国理念を象徴する政府機関だが、その厳格な宗教風紀の取り締まりを通して社会から批判され、また宗教的に保守な社会というサウジアラビアへの否定的なイメージの象徴とされてきた。他方で委員会を巡っては、厳にイスラームを実践する社会の形成に貢献する存在としての根強い肯定的評価が存在し、また今日の社会の変化への反動として新たにそれを支持する声も生まれている。それらを確認すると、委員会が理想の社会像を社会と共有する機能を果たし、社会と潜在的な互恵関係を築いていることが見て取れ、本稿はその考察が宗教の社会貢献を巡る研究に新たな展望を提供しうると考える。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top