本稿は、東日本大震災に関する宗教社会学的研究の可能性について、その視角と射程を考察しつつ、被災地域における祭祀や祭礼の現地調査にもとづきながら検証しようとするものである。震災後生み出される言説空間のなかで個人的な体験談が強調される一方で、社会的な次元をどのように記述し得るかは重要な課題となっている。本稿では、村落のレジリアンスという観点から祭礼の復興と持続に関わる諸機構について考察を行った。現地調査による資料を考察した結果、祭礼の復興が現実化される場面において「社会空間」が極めて重要な役割を演じていることが分かってきた。特に、震災前の社会空間は、震災後においても祭礼の再開を含めた様々なプロセスにおいて重要な意味をもちつづけている。それゆえ、一方で震災前の社会空間を詳細に描写しながら、他方でそれが現前する空間のなかに社会の再編や祭礼の復興を通して及ぼしていく影響を追跡的に記述していかなければならない。