宗教と社会
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論文
政教関係と寺院の社会活動―カンボジア南東部村落を事例として―
大坪 加奈子
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2017 年 23 巻 p. 63-78

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抄録

本稿の目的は、カンボジア南東部村落の事例をもとに、僧侶や寺委員会が行う社会活動について明らかにすることである。具体的には、政教関係を中心に活動を取り巻く構造や関与する行為者間の関係性に着目する。大多数が上座仏教を信仰するカンボジアでは、1990年代より僧侶や寺委員会が行う地域社会での活動が「社会参加仏教」や「開発僧」の活動であるとして、NGOや開発学研究者の強い関心を集めてきた。こうした活動は、地域社会での相互扶助的な活動からNGOなどの団体を設立して地域社会を越えて行う大規模な活動まで多岐にわたっている。その背景には、寺院がもつ人・モノ・カネが集まるという特性に加えて、政府が僧侶の社会活動を推奨し、僧侶自身もそれを志向してきたこと、政府が仏教を政治的に利用してきたことがある。そこでは、関与する人びとが異なる意図をもちながらも、社会のための活動が行われていくという錯綜した状況がみられることを指摘する。

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