宗教と社会
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論文
苦難の神義論と災禍をめぐる記念式典―アチェの津波にかんする集団と個人の宗教的意味づけ―
福田 雄
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2018 年 24 巻 p. 65-80

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抄録

本論文は、ヴェーバーの苦難の神義論を、集団と個人間における苦難の意味づけの相克を考察するための理論的手立てとして捉え返す。そのうえで本論文は、災禍といかに向き合うのかという問題を、インドネシア・アチェのスマトラ島沖地震をめぐる記念式典という具体的事例のなかに考察することを試みる。スマトラ島沖地震をめぐるアチェ州主催11周年ツナミ記念式典における最も重要な主題は、神との関係のなかで災禍の意味を理解することにある。記念行事では、災禍を神からの「試練」として受け止め、ツナミの犠牲者を「殉教者」とみなす儀礼や語りが見出された。その救いの教説は、神学的合理性というよりは、むしろアチェの歴史的背景と結びついた日常的文脈に基礎づけられていた。アチェ社会において支配的なこの救いの教説は、これとの対比において周縁化される苦しみの個別的経験を明らかにするための可能性を示唆している。

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