宗教と社会
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論文
敬虔と威信をめぐって―巡礼(ウムラ)にみるインドネシアのイスラーム復興―
荒木 亮
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2018 年 24 巻 p. 81-96

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抄録

都市中間層を中心として展開するインドネシアのイスラーム復興では、「イスラーム化」と「(欧米)近代化」とが混ざり合って進行している側面がある。そこで本稿は、今日のインドネシアで流行するウムラを事例に、広くは「宗教の商品化」として論じられる現象について検討する。具体的には、フィールドワーク調査とインタビュー・データに基づき、イスラーム復興の一環と捉えられるウムラを通じた巡礼者増加の背景には、人々の敬虔さや信仰心の深化が挙げられるものの、一方で、個々人の社会的・経済的な威信を担保するという動機がみられることを指摘した。そのうえで本稿では、イスラーム復興が「宗教化」と「世俗化」との混成的な現象であるという視点からウムラの流行現象を捉えるとともに、ウムラをめぐる語りの分析を通じて、今日のイスラームないしはムスリムの信仰の位相をインドネシアの社会・文化的文脈から明らかにした。

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