宗教と社会
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論文
「勤王僧」の顕彰と地域社会―福井県三国地域を事例として―
髙橋 秀慧
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2019 年 25 巻 p. 1-15

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抄録

贈位を通じた人物顕彰は、史蹟整備等と並んで、ローカル/ナショナルなアイデンティティを結びつけるものである。贈位は、被贈位者の「功績」を尺度として序列化し、国家のイデオロギーを臣民に浸透させるための「溶媒」としての性格を持っている。本稿は、寺院を中心とする地域社会が文化政策を通じてナショナリズムを受容し、地域社会へ浸透させていく過程を明らかにするため、福井県三国地域の僧侶を中心に政治家、知識人らが推進した勤王僧の贈位請願運動を分析した。その結果、運動の背景に、鉄道敷設や観光開発など、近代化に伴う社会変動に対応しようとする寺院と地域社会の姿が見られた。つまり、地域社会における贈位請願運動の意義・目的は、従来指摘されてきたナショナリズムとの単線的な結びつきだけではなく、史蹟整備等の文化政策との関わりや、地域社会の思惑と結びつくことで、多義的なものになることが明らかになった。

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