宗教と社会
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論文
イスコン・バンクーバー支部の半世紀―「組織的」布教からマントラのシェアへ―
小尾 淳
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2019 年 25 巻 p. 33-47

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抄録

本稿では宗教組織「クリシュナ意識国際協会」(イスコン)バンクーバー支部の半世紀余にわたる歴史を、布教活動の側面に着目しながら記述することにより、信者らの布教に対する価値観の変化を捉える。先行研究では、信者の世代交代や南アジア系移民の急増といった内的・外的要因による組織的変化が詳細に論じられてきたものの、それらが同協会の布教活動—公共の場におけるマントラの詠唱(キールタン)や刊行物の配布—にもたらした影響は具体的に検討されてこなかった。本稿では主に次の3点を指摘する。第一に、信者らの流動的変化に伴うイスコンの「組織的」布教活動の限界である。第二に、2000年代以降の商業的ヨーガやグローバル音楽市場など「外部」におけるキールタンの流行が、信者にその「再評価」の機会をもたらしたことである。第三に、一部の信者が非信者の視点に立ち、必ずしも「改宗」を目的としない、教えを共有する場を創出したことである。

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