理学療法学
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教育セミナー
理学療法におけるバランスの捉え方
―概念・評価・改善へのアプローチ―
望月 久
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キーワード: バランス, 臨床的評価
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2005 年 32 巻 4 号 p. 192-196

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抄録

バランスは理学療法に関連の深い用語であるが, 姿勢の変化や外乱に対する立ち直り反応や平衡反応といった姿勢反応としてのバランス, 生体力学的分析に適した身体重心線と支持基底面の関連性としてのバランス, 特定の検査方法を通してみた結果としてのバランスなど, バランスに対しては様々な捉え方があり, その意味内容は理学療法士によって, また同じ理学療法士でも使用する文脈によって異なっているように思われる。本論では, バランスについての考え方を整理し, バランスの評価およびバランス改善へのアプローチについて検討したい。バランスの概念的整理 1. バランスをみる視点 一般的な意味におけるバランスは, 姿勢保持や動作時に転倒せず安定してその動作が遂行できること, または遂行していることを指していると思われる。Shumway-Cookらは, 姿勢調節には身体(姿勢)の方向付け(postural orientation)と安定性(postural stability)の2側面があり, バランスは後者に関する概念と捉えている。理学療法士は対象者のパフォーマンスを観察し, その状況から対象者が実施している動作の自立度や安定性, パフォーマンスを実現させている身体能力, 調節機構としての感覚, 運動神経系の機能を推測している。それら全てを漠然とバランスという用語で表していることもあり, 姿勢調節に関連する身体能力や神経機構を指していることもある。

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© 2005 公益社団法人 日本理学療法士協会
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