2005 年 32 巻 4 号 p. 265-268
寒冷療法は, 古代ギリシア, ローマで雪と天然の氷を使って医学的治療をしたことが始まりとされ, 1881年には冷湿布が手術の補助手段として認められていた。スポーツ外傷の日常的管理に冷却が用いられるようになったのは1950年代初頭で, 歴史的には比較的新しい。1970年代になり, スポーツ医学の臨床家らによって応急処置に冷却が適用されたが, 多くの医師はスポーツ外傷に依然として温熱を用いていた。広義の寒冷療法は, 外傷急性期のRICES処置や熱傷時の冷却, 発熱時の冷却, 移植臓器保全, 術後の合併症管理等, 広範囲に用いられているものの, その使用方法については複雑で, まだ混乱が生じている感が否めない。また, 寒冷療法に関する研究報告は多く, その生理学的作用も一般的に受け入れられているが, 開始時期, 冷却時間, 終了時期等については報告者によってバラツキがあり, 経験的要素が強いと言っても過言ではない。本稿では, 寒冷療法に関連する緒家の報告やスポーツ現場等で実際に行われているアイシングを紹介し, 疼痛に対して寒冷療法をどのように活用できるかについて述べる。