抄録
【目的】本研究は要支援・要介護高齢者を対象として,運動機能と6ヵ月後のADL変化との関係を検討した。【方法】対象は通所介護サービスを利用していた高齢者175名(81.4 ± 6.4歳)とした。運動機能検査は,握力,5回椅子立ち座り,開眼片足立ち,歩行速度,timed “up & go” testとした。ADLの評価にはfunctional independence measureの運動13項目を用い,これらをセルフケア,排泄コントロール,移乗移動にカテゴリー分類した。6ヵ月後に各カテゴリー内の1項目でも得点低下を認めた対象者を,各カテゴリーにおけるADL低下群,低下を認めなかった者はADL維持向上群とした。分析はADL低下とベースライン時の運動機能検査値との関係を検討するため,多重ロジスティック回帰分析を実施した。【結果】多重ロジスティック回帰分析の結果,ADLの移乗移動の低下とtimed “up & go” testとの有意な関係が認められた(オッズ比1.11,95%信頼区間;1.02-1.20,p < 0.05)。【結論】高齢者の移乗移動能力低下の予測のためにtimed “up & go” testは有益であると考えられた。セルフケアと排泄コントロールの低下については運動機能検査値のみではなく,他の因子を加えた検討が必要と考えられた。