2011 年 38 巻 3 号 p. 165-172
【目的】本研究では歩行周期変動と他の運動機能,転倒との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者124人(平均年齢74.2 ± 7.7歳)とした。歩行周期変動は小型の加速度計を用いて10m歩行時に測定し,連続する1歩行周期時間のデータから変動係数を算出した。歩行周期変動と他の運動機能との関係は相関係数により検討し,転倒の有無を従属変数,運動機能を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い転倒に関わる運動機能を検討した。【結果】歩行周期変動と有意な相関を示した運動機能は10m快適歩行速度,10m最大歩行速度,Timed Up and Go Test,6分間歩行距離,Functional Reach Test,最大等尺性膝伸展筋力,30-s Chair Stand Test(|r| = 0.31〜0.58)であった。また多重ロジスティック回帰分析の結果,歩行周期変動のみが転倒に関わる要因として抽出された。【結論】歩行周期変動は総合的な歩行能力を示す指標であり,高齢者の転倒発生に関わる有用な指標であるといえる。