理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
研究論文
異なる肩関節外転角度における上肢の複合運動時筋力と起居移動動作との関係
半澤 宏美千葉 直美佐々木 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 17 巻 4 号 p. 227-232

詳細
抄録

異なる肩関節外転角度での上肢クローズドキネティックチェイン(CKC)運動時筋力を測定し,運動方向による差異を比較するとともに,起居移動動作との関連を検討した。対象は若年健常女性16名(19.2±1.2歳)である。方法として,まず肩関節外転0°,15°,30°方向への上肢CKCでの伸展運動時等速性筋力を,60,180,300 deg/secの運動速度で測定した。また,車椅子10 m駆動時間,30秒間に反復可能なプッシュアップ回数,T字杖免荷率の3項目とした。各肩関節外転角度における上肢CKC運動時筋力は,どの運動速度においても外転角度の増加に伴って有意に低値を示した。この筋力は,車椅子10 m駆動時間,プッシュアップ回数との間に相関が示されなかったが,T字杖免荷率の60,180 deg/secにおけるいずれの運動方向でも有意な相関を認め,300 deg/secにおいては外転0°方向で相関を認めた。上肢CKC運動時の筋力は,どの運動速度でも方向特異性が認められ,上腕骨の内転作用も有する広背筋の作用が大きいことが示唆された。また,起居移動動作能力との関係においては,車椅子駆動やプッシュアップが筋力以外の身体技能や筋持久力が求められる課題であるのに対して,T字杖免荷率は複雑な技能が比較的要求されない課題であるため,60,180 deg/secでの筋力と相関が認められたものと考えられる。以上,上肢CKC運動時筋力の運動方向特異性が示されたが ,起居移動動作との関連において運動方向の相違が反映されることについては明らかにできなかった。

著者関連情報
© 2002 by the Society of Physical Therapy Science
前の記事 次の記事
feedback
Top