2004 年 19 巻 2 号 p. 107-110
我が国では,転倒の危険性から妊婦はヒールのない靴を履く習慣がある。また,最近では妊婦は2-3 cmのヒール靴を履いた方がよいという報告もある。しかし,妊婦がヒール靴を履いた際の効果を明らかにした研究は少ない。そこで我々はバイオメカニクスの観点からヒール靴が妊婦歩行に与える影響を調べることを目的とした。妊婦を対象とした研究を行うための基礎データとして,7名の健常成人女性に妊婦体験ジャケットを装着させ,ヒールのない靴と3 cmのヒール靴を履いた際の基礎的な歩行パラメーターと下肢関節モーメントを4枚の床反力計と三次元動作分析装置を用いて計測し比較した。その結果,3 cmのヒール靴を履いた際の足関節底屈モーメントに,4.1%の減少が認められた。このことから,3 cmのヒール靴が足関節底屈筋群への負担を軽減させる可能性が示唆された。