2005 年 20 巻 1 号 p. 43-48
整形外科領域の代表的疼痛性疾患には変形性膝関節症(以下,OA)や関節リウマチ(以下,RA)が多くみられる。膝関節疾患患者等の一般的リハビリテーションとして下肢筋力強化運動がよく行われるが,ADLを高めるためには関節固有感覚(動きの感知や関節角度の感知)の働きも重要となる。本研究では,膝関節に着目し膝関節固有感覚(膝関節の閾値,及び位置覚)と膝関節周囲筋力(膝伸展トルク・屈曲トルク)との関係を明らかにすることを目的とした。さらに臨床現場での実情を考慮して,筋力低下が関節固有感覚に及ぼす影響について「筋力低下と関節固有感覚低下の関連モデル」を独自に作成して考察に用いた。健常女性10名(平均年齢19.5±0.5歳)20肢を対象として膝関節の閾値と位置覚の測定を行い,また大腿四頭筋と大腿二頭筋の筋力測定を行った。膝関節の閾値と位置覚の測定には,先に筆者らが考案・作成した装置を用いた。膝関節固有感覚の測定において,閾値と位置覚の関連がr=0.89(p<0.01),膝関節トルクにおいて,伸展筋トルクと屈曲筋トルクの関連がr=0.81(p<0.01)で各々強い相関を示した。また,膝関節固有感覚(閾値,及び位置覚)と膝関節筋力(伸展トルク・屈曲トルク)の関係は概ね負の相関を示し,膝関節筋力は膝関節固有感覚に関与する可能性を示した。