2005 年 20 巻 1 号 p. 49-52
臨床で関節位置覚を評価した際に1回目と2回目の測定値が大きく異なることを経験する。これは関節位置覚の真値以外の誤差が混入していることにより生じていると解釈され,測定値としての信頼性は低いと考える。そこで本稿では,関節位置覚測定で高い信頼性を保証するために必要な測定回数について検討することを目的とした。健常高齢者32名64膝を対象に,角度変位と到達時間からおおよそ10°/secと70°/secを目標とする2つの角速度で角度設定を行い,それぞれ10°,40°,70°の角度でBarrett法を用いた関節位置覚測定を複数回実施した。最初に複数回の測定で得られた測定値から,各条件ごとの信頼性係数を求めた。次に目標とする信頼性係数を0.81と設定して,求められた信頼性係数をSpeaman-Brownの公式に代入した。これで得られた値を信頼性を得るために必要な測定回数とし,その回数をもとに再度測定して確認を行った。その結果,高い信頼性を保証するには3回測定の平均値を用いることが必要であることが分かった。このことから,1回の測定値から関節位置覚の異常の有無を判断するのは危険であると考えられた。今後は,この測定回数が障害を有する者でも適応するか検討する必要があると考えられた。