2005 年 20 巻 2 号 p. 143-147
本稿の目的は,大腿骨近位部骨折(大腿骨骨折)を受傷した高齢な患者における受傷前,退院時,調査時の日常生活活動(ADL)と知能との関連性を検討することである。大腿骨骨折患者84名(平均年齢81.1±7.1歳)を対象として,知能,受傷前ADL,退院時ADL,調査時ADLを評価し,関連性を解析した。その結果,全てのADLと知能は,ほとんどが有意な相関を示した。知能が低下している者は,ADLが受傷前よりも退院時または調査時ともに有意に低下しており,入浴,更衣,歩行,排泄で著しかった。正準相関分析による第1正準変数の結果では,調査時の更衣,排泄,歩行に対して,これらと類似した受傷前ADLの項目が大きく関与し,さらに知能との関連性が高いことがわかった。第2正準変数では,入浴や食事が他の項目と違った特徴を示すことがわかった。今回は単一施設で治療を受けた患者のみを対象としていたが,施設ごとの治療方針の違い,地域差の影響も否めず,他施設間にわたる調査を継続する必要もある。