2005 年 20 巻 4 号 p. 303-307
本研究の目的は腰掛け位からの起立動作における身体質量中心の水平移動から垂直移動への運動の切り替えがどのようなメカニズムのもとで行われているかを解明することである。体幹前傾による推進運動量の発生や身体質量中心の運動,下肢伸展モーメント発揮タイミングなどを起立動作中にみられるイベントとして位置付け,動作スピード要因を負荷することでこれらイベントの内容や時系列順序性の変化を捉えた。19名の健常成人を対象に動作スピード3条件の起立を行わせた。その結果,動作開始から殿部離床完了までの相で動作スピード要因に応じたイベント発生タイミングの時期に有意な差がみられた。これらから運動の切り替え制御は,推進運動量に対する制動のための股関節パワーを動作開始後まもなく増大させ,このタイミングを起立条件に応じて図ることで行われていると考えられた。