2008 年 23 巻 1 号 p. 91-95
本研究の目的は,母趾末節底部の触圧覚刺激が足圧中心トラッキング動作(動的バランス)に与える影響を明らかにすることである。対象は健常学生15名とした。刺激条件は裸足での刺激なしと母趾末節底部をゴム球で刺激する2条件とした。フォースプレート上で,前方のモニターに映しだされる目標点に足圧中心を一致させるトラッキング動作を課題とした。課題における評価項目は,立ち上がり時間,目標点との誤差,誤差の改善率,足圧中心の動揺速度および動揺加速度とした。結果は,母趾末節底部に刺激を負荷した条件で,誤差の改善率が有意に高くなり,さらに,足圧中心動揺速度と加速度が有意に低下した。本研究の結果から,トラッキング動作における母趾末節底部の触圧感覚情報の増加は,目標点との位置誤差の修正と足圧中心動揺の安定性に関与していることが明らかとなった。