2008 年 23 巻 5 号 p. 593-596
[目的]重量保持動作における課題の難易度が重量知覚に及ぼす効果について検討した。[対象]健常男性7名を対象とした。[方法]各被験者について,手関節裂隙に負荷した体重の5%の重量を2回保持してもらい,一回目と二回目の重量知覚の差異に関する判断を求めた。一回目の重量保持は難易度を設けない重量保持課題(normal task:以下NT),二回目難易度を設けた重量保持課題(precise task:以下PT)とした。[結果]課題遂行中に上腕二頭筋と腕橈骨筋から導出した筋活動には,課題の難易度による有意な差が認められなかった。しかし,両課題における物理的重量は等しいにも拘わらず,7名中5名の被験者がPTの方が重いと判断した。[結語]重量保持動作における難易度により重量知覚が変化する可能性が示唆された。こうした課題の難易度により変化する重量知覚という現象の出現機構を種々の神経生理学的事実にもとづいて論議した。