抄録
〔目的〕本研究では,加齢による視覚機能の変化が,高齢者の姿勢制御能力に及ぼす影響を考察することを目的として行った。〔対象と方法〕対象は,若年群11名(19-20歳)と高齢群11名(60-84歳)とした。対象者にはアイマークレコーダー(EMR)を装着させ,Equi-test上,立位姿勢となり,前景盤と床が上下方向に動くSensory organization test 6の外乱刺激を加えた。〔結果〕高齢群では重心動揺の軌跡長の増大が認められた。加えて,EMRデータから,瞳孔径,停留時間および輻輳角において,両眼ともに有意な差が認められた。また,眼球運動の軌跡における平面面積では右眼のみに有意な差が認められた。〔結語〕高齢者では外乱刺激時の重心動揺が大きくなり,それに伴い眼球運動の軌跡は増大していた。これは,視覚情報を安定して中枢へ伝えるために網膜像のぶれを修正しているためであると考えられる。これらのことから,視覚情報は姿勢制御において重要な因子であると示唆できる。